4. α-マンゴスチンに関する他の細胞株への増殖抑制効果と、作用機序の解明
α-マンゴスチンがDLD-1およびHL60細胞株に対する増殖抑制効果を有することが明らかになったので、他の白血病細胞・大腸癌細胞に対する増殖抑制有効濃度について調べると共に、その作用機序を調べる為に、それぞれの細胞形態(核染色)の変化と細胞から抽出したDNAの電気泳動像についても観察を行いました。
いずれの細胞株に対しても増殖抑制効果を有することが明らかとなりました。
また、α-マンゴスチンの作用機序について精査するために、キャスパーゼ活性、ミトコンドリアの膜電位および電子顕微鏡所見について観察しました。
キャスパーゼという酵素は細胞のアポトーシス誘導時に関与する酵素で、なかでもキャスパーゼ-3および-9が活性化されるとアポトーシスが誘導され、細胞が死に至ることが明らかにされており、細胞増殖抑制の作用機序解明の一つの指標になるとされています。
結果として、図に示すようにキャスパーゼ-3および-9のいずれも活性化されていることから、α-マンゴスチンの細胞増殖抑制活性の作用機序として、アポトーシスが関与していることが明らかとなりました。
さらに、アポトーシスには大きく分けて2つの誘導経路があるとされています。デスレセプター系とミトコンドリア系です。それぞれ、デスレセプターと呼ばれる受容体が関与する経路と、細胞内のミトコンドリアが関与する経路のことで、いずれの経路によってアポトーシスが誘導されているかを明らかとするために、ミトコンドリアの挙動について観察しております。
結果、ミトコンドリアの膜電位は大きく変化し、膨化が観察されたことに加え、電子顕微鏡写真の所見からも膨化が観察されたことで、α-マンゴスチンの抗癌活性の作用機序はミトコンドリアの関与によるアポトーシス誘導の可能性が示唆されました。したがって、抗がん剤と異なり耐性がおこりにいことが考えられます。